EALの今から始める「考える力」の育て方 ~ オランダのインター校でIBにつまずかないために

オランダの政府助成インターナショナルスクール(DIS)では、EAL(英語サポート)が無料で提供され、成績も安定している。「学校は楽しいし、今はこれで大丈夫だろう」そう感じているご家庭は少なくありません。
しかし、この「ゆるやかな安心感」こそが、MYPやIBで大きな壁に直面する原因です。EALで身につくのは、授業に参加するための「日常英語(BICS)」まで。IBで評価される「アカデミック英語(CALP)」と「思考を構造化する力」は、意識的に育てなければ育ちません。
この記事では、EAL段階の「今」から始めるべき準備と、MYP・IBでつまずかないための考え方をお伝えします。
1. 「日常会話」の先にあるアカデミック英語の壁:EALがカバーしない領域を知る
オランダのインター(特に公立のDIS)では、EALが無料で手厚く提供されます。しかし、その主な目的は「授業に参加するための英語力(BICS)」を身につけさせることまでです。IBで評価される「アカデミック英語(CALP)」は、EALの授業だけでは十分に習得できません。
陥りがちな状況
EALを卒業した途端、メインストリームの授業で「内容は理解できるのに、エッセイが書けない」「議論についていけない」という壁にぶつかる生徒が後を絶ちません。
ご家庭でのヒント
EALに在籍しているうちから、少しずつ「抽象的な言葉(分析する、比較する、評価する、定義するなど)」や「パラグラフ(段落)の書き方の基本」に触れさせておくことが有効です。
例えば、リサーチ課題の内容について「どうしてそう思うの?」と問いかけ、考えを言語化する習慣をつけるだけでも効果があります。
2. MYPで求められる思考習慣:「自由な学び」を「深い学び」に変える
オランダのインターでは、「自分の学びは自分で管理する」という信頼のもと、細かな宿題はほとんど出ません。
陥りがちな状況
管理型の教育に慣れていると、子どもは「明確な指示がない=何もしなくていい」と受け取ってしまいがちです。端末で動画を眺める時間を「リサーチ」と呼び、深く考える習慣が育たないままMYPを迎えるケースがあります。
ご家庭でのヒント
「勉強しなさい」と指示するよりも、「そのテーマについて、あなたはどう考えた?」と問いかけ、自分の意見をまとめる機会を作ることが効果的です。
3. 自分の言葉で「書く力」を育てる:ICT時代に失われがちな習慣を取り戻す
オランダのインターはICT活用が進んでおり、授業でも日常的に端末が使われます。便利な反面、「子どもが頭の中でどう考えているか」が見えにくくなる側面もあります。
陥りがちな状況
画面上では綺麗なスライドが完成していても、翻訳ツールや生成AIの文章を貼り付けただけで、自分の言葉で理解できていないケースが少なくありません。
ご家庭でのヒント
週に一度程度、「デジタルを閉じて、紙に手書きでまとめる時間」を設けることをおすすめします。学んだことを図や短い文章で整理する習慣は、ICTでは身につきにくい「構造化する力」を育てます。

4. IBを見据えた言語戦略:英語・日本語・オランダ語の優先順位を決める
オランダで暮らす以上、学校でオランダ語の授業は必須です。しかし、限られた時間の中で複数言語を習得するには「戦略的な割り切り」も必要です。
陥りがちな状況
英語、オランダ語、そして母語である日本語。すべてを完璧にしようと頑張りすぎた結果、どの言語も「年齢相応の深い思考や論文執筆」のレベルに届かない状態(ダブルリミテッド)に陥るリスクがあります。
ご家庭でのヒント
「18歳のとき、どの言語で小論文を書けるようになってほしいか」から逆算して考えてみてください。
IBでの大学進学を目指すのであれば、英語を「思考言語」として最優先に育て、オランダ語は「生活やコミュニケーションを楽しむ手段」と割り切る。この優先順位を明確にすることが、お子様の負担を大きく減らします。
5. 学校が教えてくれない本当の評価:「Doing great!」の言葉に隠れた実力差
オランダの先生方は、子どもの良いところを見つけるのが上手です。面談では「He/She is doing great!」とたくさん褒めてくれます。
陥りがちな状況
先生は「適応」を褒めてくれているだけなのに、親は「成績」が順調だと誤解します。学期の終わりにGrade(評価)を見て、初めて「期待されていたレベルに達していなかった」と気づくのでは遅すぎます。
ご家庭でのヒント
学校の評価基準(Rubric)を読み解き、「今、具体的に何が足りていないのか」を把握することが大切です。英語で書かれた複雑な評価基準を理解するのは簡単ではありませんが、少なくとも「何が評価対象なのか」を意識するだけでも見方は変わります。
まとめ:EALの今から始める5つのこと
ここまで、EAL段階からできる5つの視点をお伝えしてきました。
- 抽象語彙や論理構成に触れる声かけ
- リサーチ課題での「考えたこと」を言語化する習慣
- デジタルとアナログを組み合わせた学習
- 英語を「思考言語」として優先する言語戦略
- 評価基準を意識した成績の見方
これらはどれも、日々の生活の中で無理なく取り入れられるものです。まずは、できるところから始めてみてください。
その上で、「これで十分だろうか」「もっと効果的な方法があるのでは」と感じられたなら、専門家の視点を取り入れることも一つの選択肢です。
特に、お子様の学年が上がるにつれて、評価基準は複雑になり、求められる思考のレベルも上がっていきます。そのタイミングで、学校の内側を知るプロの目が加わることで、家庭での取り組みがより効果的になります。
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