IBDPから日本の大学に進学できる?英語で学べる学部・保護者が知っておくべき基礎知識

「海外大学への進学」を前提にIBDPを選んだ保護者の方でも、「やはり日本国内で就職させたい」「費用面で海外は難しい」「本人が日本に残ることを希望している」という状況は少なくありません。
一方で、IBDPを持つ学生が「日本の一般入試」に戻ることは、カリキュラムの違いから現実的に難しいケースが多いです。センター試験・共通テストを前提とした日本史・古文・漢文はIBDPのカリキュラムに含まれないため、一般選抜での国立大学受験は大きなハンディになります。
しかし近年、この状況は大きく変わっています。早稲田・慶應・上智・ICU・立命館APUをはじめ、IBDPのスコアで出願できる英語学位プログラムが日本国内に急速に整備されました。これらのプログラムは「日本にいながら国際標準の教育を受け、英語で学位を取る」という選択肢を現実のものにしています。
この記事では、IBDPを持つ学生が日本国内で英語学位を取得できる主要な大学・プログラムを、選考方式・学費・就職まで体系的にまとめました。
(※本記事の情報は2026年時点のものです。各大学の入学要件・学費・奨学金は毎年更新されます。最終確認は必ず各大学の公式サイトでお願いいたします)
1. IBDPは日本国内の大学に通用するか
結論:通用します。ただし対応しているのは特定のプログラムに限られます。
日本の国公立大学の一般選抜はほぼすべて共通テストを前提としており、IBDPのスコアは使えません。
ただし以下の2つのルートで、IBDPを正式な出願資格として使える大学・選抜方式が存在します。
- ルート①:IB入試(IBDPスコアによる特別選抜)
国公立・私立問わず、IBDPのスコアを出願資格として受け付ける専用の入試枠です。東京大学・京都大学・東北大学などの国立大学も設けており、国際的なバックグラウンドを持つ学生の受け入れを拡大しています。 - ルート②:英語学位プログラムへの出願
英語のみで学位が取得できるプログラムへの出願は、IBDPのスコアと英語力証明(IELTSなど)が主な審査基準になります。一般選抜とは完全に独立した選考です。
日本の大学がIBDPを評価する理由
- 文部科学省の推進政策
日本政府はIBプログラムの普及を国家政策として推進しており、国内のIB認定校(全プログラム)は200校を突破、DP(ディプロマ)提供校も100校を超えて拡大を続けています。 - グローバル人材育成の需要
日本企業のグローバル化に伴い、英語で学術的思考ができる学生の需要が高まっている。 - 少子化による入学者確保
大学側が多様な選抜方式を導入する動機の一つとして、IBDPを持つ国際的な学生の獲得がある。
「日本の大学=共通テスト」は過去のイメージです。IBDPを持つ学生には、英語学位プログラムという独自のルートが開かれています。ただし対応プログラムが限られるため、早い段階から「どのプログラムを狙うか」を絞っておくことが重要です。
2. 主要な英語学位プログラムと大学
早稲田大学・国際教養学部(SILS)
日本国内の英語学位プログラムの中で最も知名度が高く、歴史もあります。
- 授業言語: 原則すべて英語。卒業論文も英語
- 学位: 学士(国際教養)
- 学生構成: 日本人学生と留学生が混在。国際的なキャンパス環境
- IBDPでの出願: IB取得者は主に「AO入学試験」の枠で出願します。基本は書類審査(IBスコア、志望理由書等)中心であり、大学独自の個別面接は原則課されません(国内選考の一部で記述式の筆記審査「Critical Writing」が課されます)。
- 入学後の特徴: 1年間の海外留学が必須。英語・日本語のバイリンガル教育
- 就職: 外資系・総合商社・コンサル・メディアへの就職実績が高い
慶應義塾大学・環境情報学部(SFC)/総合政策学部
SFC(湘南藤沢キャンパス)は問題発見・解決型教育で知られる独自のカリキュラムを持ちます。
- IBDPでの出願: AO入試(総合型選抜)でIBDPのスコアと実績を評価。英語・日本語どちらでも提出可能な書類審査と面接
- 英語での学習: 完全に英語のみで学位を取得できる「GIGAプログラム(Global Information and Governance Academic Program)」が明確に設置されており、AO入試(GIGA)でIBスコアを活用して出願・卒業することが可能です。
- 特徴: 自由度が高いカリキュラム。プログラミング・デザイン・社会政策・バイオなど幅広い分野を横断
上智大学・国際教養学部(FLA)
- 授業言語: すべて英語
- IBDPでの出願: IBスコアによる出願枠あり。英語力証明(IELTS 6.5以上目安)
- 特徴: 少人数のリベラルアーツ教育。アメリカのリベラルアーツカレッジに近い教育スタイル
- 学生構成: 日本人・外国人学生が半々程度。国際色が強い
国際基督教大学(ICU)
日本最古の本格的なリベラルアーツ大学。IBDPとの親和性が最も高い国内大学の一つです。
- 授業言語: 英語・日本語のバイリンガル。英語のみでも卒業可能
- IBDPでの出願: IBスコアによる「IB特別入試」枠あり。英語・日本語の2言語でのエッセイと面接
- 特徴: 31のメジャーから自由に専攻を設計。少人数ゼミ中心の教育。EE・TOKで鍛えられた思考力が直接活かせる
- 就職: 外資系・NGO・官公庁・研究職への実績
立命館アジア太平洋大学(APU)
大分県別府市に位置し、全学生の約半数が国際学生という特異な環境が最大の特徴です。
- 授業言語: 英語・日本語の2言語。英語のみでも卒業可能
- IBDPでの出願: IBスコアによる出願枠あり。小論文・面接
- 学費: 他の上位私立大学より比較的安価。奨学金制度も充実
- 特徴: アジア・太平洋地域の学生が多く、多文化環境が学べる。観光・経営・国際関係を中心とした学部構成
- 就職: 国内就職だけでなく、アジア圏への就職ルートが太い
東京大学・教養学部前期課程(PEAK)
東京大学が設ける英語学位プログラムで、日本最難関大学での英語教育が受けられます。
- 授業言語: すべて英語(Japanese Studies ProgramとInternational Programの2コース)
- IBDPでの出願: 第1次選考(IBスコア・英語力・エッセイ等の書類審査)と、第2次選考(面接)による選考。大学独自の筆記試験はありません。
- 特徴: 東京大学の学部教育(前期教養・後期専門)と同等の学術水準。3年次から理系・文系の各学部に進学できる
- 競争率: 非常に高い。世界中からの優秀な学生と競合する
その他の注目プログラム
| 大学・プログラム | 特徴 |
| 京都大学・国際高等教育院 | 理系・文系横断。研究大学としての環境 |
| 大阪大学・グローバル入試 | IBスコアによる出願枠。理工系に強み |
| 明治大学・国際日本学部 | 英語授業が多い。日本文化・社会を英語で学ぶ |
| 法政大学・グローバル教養学部(GIS) | 全授業英語。IBDPスコアで出願可能 |
| 津田塾大学・学芸学部英文学科 | 少人数・女子大。英語教育の質が高い |
3. 合格に必要なIBスコアの目安
日本国内の英語学位プログラムは、出願時に「IBDPのスコア+英語力証明+エッセイ・面接」の組み合わせで審査されます。スコアのみで合否が決まるわけではありませんが、足切りとなる目安は以下の通りです。
プログラム別スコア目安
| 志望先 | IBDPスコア目安 | 補足 |
| 東京大学 PEAK | 38〜42点 | 世界からの競合。書類審査と面接の比重大 |
| 早稲田大学 SILS | 32〜38点 | 書類審査中心(一部筆記あり) |
| 慶應義塾大学 SFC | 書類・面接重視 | スコアより実績・ビジョンが評価される |
| 上智大学 FLA | 30〜36点 | IELTS 6.5以上が目安 |
| ICU | 30〜36点 | IB特別入試。エッセイと面接の比重が高い |
| APU | 28〜34点 | 比較的入りやすい。奨学金が充実 |
| 法政大学 GIS | 32〜36点 | 出願資格としてIBDP総点32点以上が必須 |
HL科目の選択と国内就職
国内の英語学部進学においてもHL科目の選択は重要です。ただし、国内就職を視野に入れる場合、「専攻との一致」よりも「総合スコアの高さ」と「英語力の証明」の方が評価される傾向があります。
- 文系志望(SILS・ICU・FLA): HL英語A・歴史・経済学が標準的な構成
- 理系から文系転換(SFC・APU): HL数学+文系科目の組み合わせが有効
- 理系継続(東大PEAK・阪大): HL数学AA・理科系科目が必要
4. 選考方式:日本国内英語学部の入試の特徴
共通する特徴
日本国内の英語学位プログラムの入試は、欧米の大学と日本の一般入試の「中間」に位置するスタイルです。
- IBDPスコアは「証明書」として機能する
出願資格と学力水準の証明として使われますが、合否の全てを決めるわけではない - 英語力証明が必須
IELTS・TOEFL・英検の提出を求めるプログラムが多い(IBDPのEnglish A/Bで代替可能なケースもある) - エッセイ・志望理由書が重要
「なぜこのプログラムか」「大学でどう学ぶか」「社会にどう貢献するか」を日本語または英語で問う - 面接が実施される
多くのプログラムで個人面接またはグループ面接が課される(※一部書類のみの選考もあり)
各大学の選考の特徴
- 早稲田SILS
AO入試の国内選考において記述式の筆記審査(Critical Writing)が課されます。IBスコアという実績に加え、「英語で論じる力」が直接試されます。 - 慶應SFC
書類審査(志願理由書・活動報告)と面接が中心。IBDPの「実績」よりも「これから何をしたいか」というビジョンが問われる。 - ICU
「IB特別入試」として独立した選考枠あり。英語・日本語の2言語でのエッセイを書く。IBDPの精神(探究・多角的思考)と最も親和性が高い選考スタイル。 - APU
書類と面接中心。国際経験・多文化への関心を重視する。
- IBDPの成績を最優先にしながら、「このプログラムで何を学び、卒業後どうするか」というビジョンを早期に言語化させる
- 英語力証明(IELTS・TOEFL)の準備をIBDP2年目の前半までに完了させる
- ICUなどはEEの内容を面接で問われることがある。EEのテーマを自信を持って語れるよう準備する
5. EE(課題論文)とTOKは国内入試に有利か
ボーナスポイントの仕組み
EEとTOKの評価の組み合わせで最大3点のボーナスポイントが加算されます。この3点は最終IBDPスコアに反映され、出願時のスコアとして評価されます。
| EE評価 | TOK評価 | ボーナス点 |
| A | A/B | 3点 |
| B | B/C | 2点 |
| C | C | 1点 |
| D以下 | D以下 | 0点 |
| E(いずれか) | — | DP不合格(失格) |
国内英語学部特有の活用ポイント
- 志望理由書・エッセイの最強素材
国内の英語学位プログラムの多くは「なぜこの分野を学びたいのか」を問う志望理由書を求めます。EEでの研究経験は、「高校時代にすでに学術的探究に取り組んだ」という具体的な証拠として最大限活用できます。たとえばICUの「なぜICUで学ぶのか」というエッセイに対して、「EEで日本の教育格差と学習意欲の相関を研究した経験から、教育政策を学びたいと考えるようになった」という文脈は非常に強い説得力を持ちます。 - 面接での活用
ICU等の面接では「あなたが深く考えてきた問いは何か」という質問が出やすいです。TOKで鍛えられた「知識の前提を問い直す」姿勢と、EEで取り組んだ「一つの問いを深く掘り下げる」経験は、この質問への最良の回答素材になります。
国内の英語学位プログラムを志望する場合も、EEのテーマは「将来学びたい分野との接続」を意識してください。「学問への本物の動機」を強く重視するため、EEが「やらされた課題」ではなく「自分で選んだ問い」であることが伝わる準備が重要です。
6. 学費と生活費:国内英語学部のコスト
学費の目安(年額)
国内大学であるため、海外進学と比較すると学費・生活費ともに大幅に抑えられます。
| 大学・プログラム | 年間学費の目安 | 補足 |
| 東京大学 PEAK | 約535,800円(国立大授業料) | 国立大学の標準授業料 |
| ICU | 約120〜140万円 | 私立リベラルアーツとしては標準的 |
| 早稲田大学 SILS | 約130〜145万円 | 早稲田の他学部とほぼ同等 |
| 上智大学 FLA | 約130〜150万円 | 上智の他学部とほぼ同等 |
| 慶應義塾大学 SFC | 約130〜145万円 | 慶應の他学部とほぼ同等 |
| APU | 約140〜160万円 | 国際学生向け学費。奨学金で実質負担軽減可 |
| 法政大学 GIS | 約120〜135万円 | 比較的安価 |
海外進学との比較: アメリカ・オーストラリアの年間コスト(学費+生活費)が400〜700万円以上になるのに対し、国内英語学部なら学費のみで100〜160万円程度に収まります。
生活費の目安
状況により大きく異なります。
- 自宅通学(東京圏): 交通費・食費等で月3〜5万円
- 一人暮らし(東京・23区): 家賃含め月10〜16万円
- 一人暮らし(別府・APU周辺): 家賃含め月6〜10万円
利用できる主な奨学金
- 日本学生支援機構(JASSO)貸与奨学金: 第一種(無利子)・第二種(有利子)。
- 各大学の入学時奨学金: ICU・APU・SILSは独自の給付型奨学金あり。
- APU 入学時特別奨学金: 最大4年間の学費減免。IBスコアが審査基準の一つ。
- 民間奨学金(ソフトバンク・本田財団等): 国内大学在籍者も対象になるものが多い。
国内英語学部は「海外と同等の英語環境を、国内の学費で得られる」という意味でコストパフォーマンスが際立ちます。特にAPUは奨学金制度が充実しており、IBスコアが高いほど実質負担が下がる設計になっています。
7. 国内英語学部ならではの注目ポイント
日本語力の維持と日本国内就職
海外大学進学と比較した最大のメリットは、日本語力の維持と国内就職のしやすさです。
- 英語で学位を取りながら、日本語環境での生活・アルバイト・インターンが自然に継続できる
- 大手企業の新卒一括採用スケジュール(3年次秋〜4年次夏)に参加しやすい
- 外資系・コンサル・商社・メーカーのグローバル部門への就職実績が高い
海外大学との「ダブル出願」戦略
国内英語学部は海外大学との同時出願が可能です。
- オーストラリア・カナダの大学に出願しながら、ICU・SILSにも出願する
- 海外大学から合格が出ればそちらに進学、国内大学が唯一の合格ならそちらに進学
- 「保険」ではなく「本気の選択肢」として国内英語学部を捉えることで、選択の幅が広がる
出願スケジュール面では、国内の英語学位プログラム(特に秋入学枠)は、海外大学と同じく「11月〜3月」にかけて出願が行われます。海外大学と完全に同時並行で動くことになるため、IBDP2年目の秋からの出願準備を早めに始めることが重要です。
大学院・留学との組み合わせ
国内英語学部を卒業後に海外の大学院(MBA・法学・政策・理系大学院)に進学するルートも現実的です。英語での論文執筆・学術的思考力が大学院入試で評価されます。「学部は国内・大学院は海外」というルートは、学費総額を抑えながら国際的なキャリアを構築する合理的な戦略です。
まとめ:IBDPステージの保護者が今やるべきこと
| 時期 | アクション |
| IBDP開始前(今) | 海外進学と国内英語学部の優先順位を決める。HL科目を志望プログラムから逆算して選ぶ |
| IBDP 1年目 | EEテーマを志望理由書・面接で語れる内容と連動させて選ぶ。各プログラムの選考方式を調べる |
| IBDP 2年目前半 | 志望校リストを確定。IELTS・TOEFLの受験と目標スコア達成。奨学金要件を確認 |
| IBDP 2年目後半 | 志望理由書・エッセイの準備。推薦状を担任・教科教師に依頼。海外大学と並行した秋冬(11月〜3月等)の出願ラッシュに対応 |
| 最終試験後 | 最終IBDPスコアを大学に提出。入学手続き・奨学金申請 |
国内英語学部は「コストを抑えながら国際的な教育を受け、日本での就職選択肢を維持する」という意味で、IBDPを持つ学生にとって極めて現実的でバランスの取れた進路です。海外進学と排他的に考えるのではなく、「国内英語学部+海外大学のダブル出願」という戦略として捉えることで、IBDPの取得価値を最大化できます。



